“農家のお父さんお母さんがやっている 農家民泊のご案内”
――農家民泊を初めて知ったのは市役所に置いてあった、こんなパンフレットから。
子どもが楽しそうに農作業している写真が載っており、なんだか面白そう! 数年前に農家民宿で短期バイトをした隊員は、もちろん興味津々です。
農家民泊は文字通り農家に宿泊する、今流行の旅行形態の一つ。最近は修学旅行に取り入れている中学校も増えているそうです。修学旅行といえば「京都!奈良!寺、寺、鹿、寺!」みたいな昭和時代の自分の頃とは、隔世の感があります。
でも多感な時期の中学生を自宅に受け入れるって大変そうな気が……。
問い合わせてみようと思うと、連絡先は国営アルプスあづみの公園。
公園が農家民泊の窓口なの? 早速聞いてみました。
詳しいことを、国営アルプスあづみの公園の宮田弘康さんに伺いました。
「こちらの公園は観光やレクリエーションの場として、
また北アルプス山麓の自然や景観を保全し活用するために、国が管理している国営公園です。
その役割の一つに、地域と連携して行う農家民泊や教育旅行の取り組みがあるのです」
なるほど、もともと国営公園周辺の農家に協力を依頼したのが農家民泊の始まり。だから公園近くの松川村と大町市常盤地区に受け入れ先が多いのですね。
平成24年に松川村が受け入れを開始し、大町市では2年前、平成25年から開始しました。平成27年6月現在、大町・常盤地区の農家13軒が協力しています。
「この地域の取り組みは“松川モデル”として、農家民泊制度のお手本になるべく努力しています」と宮田さん。
農家民泊のルールを協議会で決め、農家はそれに従って生徒を受け入れています。
ルールはいくつかありますが、
簡易宿泊所(宿泊業)の許可取得、
食品衛生講習会への参加、
協議会事務局との情報共有、
グリーン・ツーリズム総合保障制度への加入、
衛生上の問題から井戸水の不使用、などです。
国内では受け入れ地域ごとにルールは違うそうですが、法律順守をしっかり掲げた“松川モデル”は先進的なんだそうです。
そんなある日、受け入れ日を目前にした自治体と農家の打ち合わせがあると聞き、その現場に行ってきました。
打ち合わせはお隣の松川村役場で行われました。受け入れ当日のスケジュール、提供する食事内容の確認、寝具の貸し出しや子どもと接する際の注意事項、緊急連絡先についてなど。
今回体験するのは大阪府内の中学校で、4クラス137人の生徒を受け入れます。
打ち合わせで一番時間を割いたのが、生徒の個人的な事情についてでした。事前に受け入れ農家に伝えるべきことがたくさんあります。
一覧表を見せてもらいましたが、その特記事項の多いこと! 動物アレルギーから花粉症、ぜんそく、食べられない食材、持病、持参する薬、何かあった場合の対処法などなど。
これだけ見ると、受け入れる側の負担が大きいのは想像に難くない……と思い、近くにいた農家の方に聞いてみました。
すると「普通に接していれば大丈夫。ただ事前に知っているのと知らないのでは違うから、説明があるのよ」と受け入れ3年目の貫録。
なるほど、注意事項に「生徒はお客様としてではなく、自分の子どもや孫と思って接してください」ともある。
最近大人とばかり付き合っていた自分が、近頃の10代を知らなすぎなんだなぁ、と反省しました。
と、同時に私、ちゃんと生徒と話しできるのかな、という気持ちがよぎります。
明日はいよいよ修学旅行、不安な夜は更けゆくのでした……(後編へ続く)